週刊新潮の胸糞悪くなる手記にあえてふれておくか

週刊新潮2007年10月11日号に、『【特別手記】スー・チー女史が「希望の星」という「ミャンマー報道」は間違っている』という手記が掲載されている。「元ミャンマー大使 山口洋一」によるものだ。

http://www.shinchosha.co.jp/shukanshincho/backnumber/20071004/

基本的に軍政ベッタリに寄った内容で、長井健司氏の死についてすらも、長井氏に問題があったような書き方をしていて胸糞悪くなったが、一部のネトウヨが喜んで取り上げているのでカウンター的に書いておく。

スー・チー女史がビルマの民衆の間でどのように評価されているか、という本題については、そんなのは長い軍政下で報道や取材も大きな制限を受けている国について、私がわかるはずもないので、そこについてはスルーする。そこではなく、その手記がどのような価値観や立場から書かれているかということについて。

中にはデモや集会を開いて逮捕された者はいますが、これは、「道路や公園などの公共の場所で5人以上の政治目的の集まりは禁止」「屋内における50名を超える政治集会は許可制」 という古くからある法律に違反したとして、検挙されたケースです。違法デモを行った者を逮捕するのは、法治国家としては当たり前のこと

「古くからある法律」というが、植民地支配→独立(社会主義体制の独裁国家)→民主化運動→クーデターによる軍政という、まともに民主主義が実現されたことのない国家における「法律」について、「違法デモを行った者を逮捕するのは、法治国家としては当たり前」と、山口洋一は述べている。こうした規制は、まともな民主主義国家では内容中立規制としてもありえないのだが、それを、山口洋一は「法治国家としては当たり前のこと」として肯定している。

かつて、ミャンマー政府は国内外の記者を集めた会見の席で、スー・チー女史宛にアメリカから違法に運ばれてきた通信機器を国境で差し押さえたことを発表しました。

山口洋一はこれをアウン・サン・スー・チー非難のネタのひとつとしているわけだが、そもそもミャンマー軍事政権が通信機器を厳しく制限してきたこと、すなわち、インターネット以前であればアナログモデムの所有が許可制であったことや、最近ようやく規制緩和されてきたが、近年においてもインターネットの利用が厳しく制限されてきたこと

などの国家による情報統制について、問題意識は述べられていない。また、

汚職や腐敗も絶無とは言いませんが、軍事政権としては稀なくらい、少ない

などと書いているが、実のところ山口自身が2005年に以下のように述べていたりする。

この国では、企業家が事業を成功させるには、権力者とうまく結びつかねばならないが、現状では何時また上層部の権力闘争で、どんな政変が起きるかわからないという不安感を誰しも抱き、実業家は戦々恐々としている。経済界で生きのびていくには、政変で致命的な打撃を受けないよう、保険をかけねばならず、例えば著名な実業家K氏はこれまでキン・ニュン首相に密着して成功を収めてきたが、他方、娘をマウン・エー副議長の息子と結婚させているので、今でも安泰といった有り様である。
http://www.consul-myanmar.com/myanmar%20jyouhou.htm

と、ここで引用したサイトだが、トップページ http://www.consul-myanmar.com/ をみると

NPO ザ・コンサルタンツ ミャンマー

とある。ミャンマーとかかわるNPOのようだ。ビルマミャンマーと関わるNPONGOといっても、そのあり方はいろいろだろう。国内問題にふれないようにしながらなんとか人道援助を行っているような団体もあるだろうし。ということで、このサイトを一通り眺めてみると、このNPOミャンマーの「経済振興」を目的としたもので、活動内容もそれに沿ったもののようだ。そして、軍事政府に対するスタンスは、週刊新潮記事ほどではないにしても、基本的に親軍政であるようだ。山口は、このNPOの最高顧問だ。また、山口は、NPO法人 アジア母子福祉協会 AMCWAという、別のミャンマーで事業をしている団体の理事長でもあるのだが、こちらについてはあまり情報はない。

決めつけるのはなんだが、山口洋一という人はいわゆるミャンマー利権の関係者と私には思えるんだが、週刊新潮的には、逆張り露悪趣味であればなんでもいいわけ?