私がおすすめする「人生を根底から豊かで納得のいくものにしてくれる」本

ネットに時間を使いすぎると人生が破壊される。人生を根底から豊かで納得のいくものにしてくれる良書25冊を紹介 - 分裂勘違い君劇場 by ふろむだの件なんだが、「人生を根底から豊かで納得のいくものにしてくれる」といった本につきあう前提条件は、何よりも時間が有り余っていることだ。有り余る時間でじっくり読み込むことができるというと、中学生から高校生、せいぜい大学生ぐらい。そういう時期に読むという前提で。

まず、哲学なんだが、「わかりやすい入門書」なんかに、さっさと手を出す必要はまるでない。「人生を根底から豊かで納得のいくものにしてくれる」ために、魂から揺さぶられる、そんなのがいい。だいたい、世の中の入門書なんて、みんな違うこと言ってるぐらい、哲学って一つの読みが正解っていうわけじゃないのだから。

とはいえ、自分で本を選んでいくには、最初は材料がなさ過ぎるという問題はあるだろう。それなら、ブックガイド的な本を選ぶといい。読みに先入観をあまり与えないだろうからね。「わかりたいあなたのための現代思想・入門」という、小阪修平志賀隆生竹田青嗣トリオの本だが、わかりやすい見取り図的な本で個々の哲学者については内容はスカスカなので、わりと向いている。最初は別冊宝島で出て、その後単行本化されてさらに文庫にもなったけれども、さすがに最近は古本でないと入手できない模様。オリジナルはフランス現代思想の視点から西欧を中心にまとめたものだけれども、日本についての続編もあって、これはどうやら文庫本では一緒になった模様。

でも最初は入門書も読まずにいきなり読むのがおすすめ。いきなりニーチェ。これ。私はリアル中2のときにいきなり「善悪の彼岸」から読んだ。岩波文庫の巻末の既刊一覧の数行の紹介文で興味を持って読んだ。魂揺さぶられまくり。まぁ、哲学というジャンルの中では「ソクラテスの弁明」とか「方法序説」が先だった気がするけれども、能動的に読んだわけじゃないしね。

ニーチェを最初に読んだころは、カミュサルトル(「実存主義とは何か」ぐらいかな。「存在と無」みたいな分量がヘビーなものには手を出さず)も読んでいた気がするので、わりと実存主義的読解。カミュサルトルの「革命か反抗か」は、わりと面白かった気がする。実存主義から外れてフランス現代思想の流れだと、 「親族の基本構造」なんかは、お勉強的には読んでもいいかも。でも心には響かないかな。ニーチェから入ると、フーコーのいろんな本とか ドゥルーズガタリの「アンチ・オイディプス」とかも興味を持つことになるのだけれども、正直、アンチ・オイディプスとかよく分からんねというか分からなくなるように書いている本なので読むこともないかも。でもフーコーは重要。影響力的にも。あと、フランス現代思想的な流れとは別に、日本という「かつての枢軸国」的には、エーリヒ・フロム「自由からの逃走」は一度読んでおくべきでしょう。

日本近代の本格的思想書というのはあんまり読んでいない気がするのだけど(日本の近現代は、なんだかんだ言って文学なのかな)、北一輝国体論及び純正社会主義」は、高校生ぐらいでぜひとも冷静に読むべき。冷静に読むには高校生ぐらいで。中二病感覚で読むものじゃない。丸山真男「日本の思想」とかは教養として必読だろうけれども、「人生を根底から豊かで納得のいくものにしてくれる」というのとはちょっと違うだろうね。日本という国の性質を考えるのには三一書房の「天皇制論集」というのもおすすめだけれども、さすがにこれは一般的には賞味期限切れかも。

…とか、ズラズラと書いてみたけれども、本が「人生を根底から豊かで納得のいくものにしてくれる」かなんて、所詮、人それぞれの個別的なものであって、まぁ、こういうテーマって単なる自分語りだよね。個人的には、 共立出版からbit別冊で出たGNU Emacs マニュアルのGNU Manifestoの日本語訳とか、古本屋でたまたま買った、竹内書店の季刊パイデイア7号(1970年発行)のモーリス・ブランショ特集とかあるけど(ブランショはこれ以外読んでいない)、あまりに個人的だよなぁ。